日本薬理学雑誌
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植物成分の抗腎炎効果に関する研究(1)ラットのオリジナルタイプ抗GBM腎炎に対するサイコサポニン類の効果とその機序
服部 智久伊藤 幹雄鈴木 良雄
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1991 年 97 巻 1 号 p. 13-21

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抄録

S.D.系雄性ラットに抗GBM腎炎を惹起し,crude saikosaponin a,cならびにd(0.5,1.0および5.0mg/kg/day,i.p.)を抗血清静注日から11日目まで投与した.crude saikosaponin,saikosaponin aならびにd(5.0mg/kg/day)は尿中蛋白排泄量を有意に抑制し,さらに血中コレステロール含量を低下させた.また,組織病理学的な指標である富核や癒着を用量依存的に改善した.しかしながらsaikosaponin cは著しい効果が見られなかった.次にsaikosaponin類の抗腎炎作用機序を検討する目的で血小板凝集能,内因性コルチコステロンならびに活性酸素スカベンジャーに対する影響を検討した.crude saikosaponinならびにsaikosaponin d5.0mg/kg投与群では充進した血小板凝集能の抑制作用がみられ,saikosaponin dの投与では血中ならびに副腎中コルチコステロンの著明な上昇が認められた.さらにcrude saikosaponinは活性酸素スカベンジャーである腎内superoxide dismutase(SOD),catalaseならびにglutathione peroxidaseの活性を上昇させ,saikosaponin a投与群でも同様な作用が認められた.従ってcrude saikosaponinはオリジナルタイプ抗GBM腎炎に対して有効であり,その抗腎炎効果には,saikosaponin aとdが関与するものと思われる.また,作用機序としてsaikosaponinの血小板凝集能抑制作用,コルチコステロン上昇作用ならびにスカベンジャー上昇作用が関与することが示唆された.

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