日本薬理学雑誌
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Ketoprofen(19583RP)の薬理学的研究 第1報 経口投与による抗炎症作用ならびに鎮痛下熱作用
藤村 一鶴見 介登平松 保造呉 晃一郎中野 万正渋谷 具久
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1974 年 70 巻 4 号 p. 543-569

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抄録

Ketoprofen〔2-(3-benzoylphenyl)-propionic acid〕の抗炎症作用ならびに鎮痛下熱作用を経口投与により試験した.このものは化学的,物理的,生物学的な各種起炎性刺激によって惹起された血管透過性充進ならびに急性浮腫に対して同程度の平行した抑制作用を示し,indomethacinとほぼ同等でphenylbutazoneの約10倍の効力を示し,急性炎症に対して強力な抑制作用を有することが認められた.紫外線紅斑に対してもindomethacinと同等の抑制効果を示し,mustardによる持続性浮腫に対してはそれより強力であったが,肉芽増殖に対する抑制作用はindomethacinよりわずかに弱かった.しかしそれでもphenylbutazoneの10倍程度の抑制効力を示し,adjuvant関節炎に対しても明らかな予防的治療的効果を示した.従ってKetoprofenは急性慢性の炎症反応に対してindomethacin程度の強力な抑制作用を有することが認められたが,慢性炎症に対してはやや弱いかもしれない.なおこの抗炎症作用は副腎を介するものではなく,またステロイド様作用でもなく直接作用によるものと思われ,胃潰瘍発現効果は抗炎症効果とほぼ比例した作用を示し,従来の酸性非ステロイド抗炎症薬と同様な範疇に属するものではあったが効力が強い点が特徴であった.他方Ketoprofenはかなりの鎮痛下熱作用を有し,bradykininに対して拮抗作用を有することは酸性抗炎症薬として既知薬物にはみられない利点であり,また軽度ながら尿酸排泄促進作用も期待されるところから新しい非ステロイド抗炎症薬として臨床上価値ある薬物と思われる.

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