日本薬理学雑誌
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特集:PACAPシグナル研究の新潮流~中枢・末梢組織での新しい生理・病態的意義~
新たな涙液分泌制御システム~PACAPによる涙液分泌促進作用とその機構~
中町 智哉
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2018 年 151 巻 6 号 p. 232-238

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抄録

下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)と血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)は約70%のアミノ酸配列の相同性を持つ神経ペプチドである.PACAPは涙腺組織にPACAP陽性線維が観察されていることが知られていたが,その生理作用については不明であった.私たちはPACAP KOマウスが角膜傷害の発症と涙液分泌の低下というドライアイ様の表現型を示すことを発見した.PACAPおよびその受容体であるPAC1受容体(PAC1-R)は涙腺組織に発現し,マウスへのPACAP点眼により涙液分泌が有意に促進されるが,VIPではその効果が弱いことが明らかになった.さらにそのシグナル解析によりPACAPはPAC1-RのGsシグナル伝達経路を介して,水チャネル分子であるアクアポリン5のリン酸化を促進し,アクアポリン5の細胞膜へのトランスロケーションを誘導することにより涙液分泌を促進することが明らかになった.本稿ではPACAPとVIPの涙液分泌に関する作用についてまとめるとともに,今後の研究展開の可能性についても解説する.

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