化学工学論文集
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材料工学,界面現象
低熱膨張性および低融性を有するV2O5–ZnO–TeO2–(ZrO)2(HPO4)2系封着加工用ガラスの開発
松尾 郁哉久保 翔平甲原 好浩武井 孝行吉田 昌弘
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2015 年 41 巻 4 号 p. 253-258

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抄録

エレクトロニクス産業において,さまざまな電子デバイスの封着に使用される“封着加工用ガラス”の開発が進められている.本報では近年脚光を浴びている4Kテレビや有機ELディスプレイ(OLED)の無アルカリガラスの封着に使用できる封着加工ガラスの調製および特性評価を行った.これら電子デバイス中の無アルカリガラスの封着加工ガラスとしては,(1)アルカリ金属類を含まないこと,(2)低融性を有すること,(3)低熱膨張性を有すること,(4)高耐水性を有することが求められる.それらを満たす原料として4種の金属酸化物(V2O5, ZnO, TeO2, (ZrO)2(HPO4)2)を用い,さまざまな組成のガラスを調製し,封着加工用ガラスとしての有用性を評価した.評価項目は,熱特性評価,熱膨張特性評価,耐水試験,粉末X線回折による構造評価,封着試験,封着強度試験である.調製したガラスの中で低融性,高耐水性かつ低熱膨張性を有するガラスの組成は,40 wt%V2O5–10 wt%ZnO–40 wt%TeO2–10 wt%(ZrO)2(HPO4)2および40 wt%V2O5–8 wt%%ZnO–40 wt%TeO2–12 wt%(ZrO)2(HPO4)2であった.しかし,これらのガラスは無アルカリガラスとの熱膨張係数の差が大きいため,粉末低熱膨張セラミックフィラーであるリン酸タングステン酸ジルコニウム(Zr2(WO4)(PO4)2, ZWP)を添加することで熱膨張特性の改善を行った.ZWPを添加することでそのガラスの熱膨張係数を低下させることができ,無アルカリガラスの封着強度を向上できた.

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© 2015 公益社団法人 化学工学会
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