日本化学会誌(化学と工業化学)
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高分子表面上の極性基の反転
筏 義人松永 忠与鈴木 昌和
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1985 年 1985 巻 6 号 p. 1079-1086

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抄録

一般的にプラズマ放電処理によって疎水性高分子表面の水ぬれ性は向上するが,空気中に放置しておくと,接触角は徐々に高くなる。この原因に対して三つの説明が提案されている。それらは高分子表面の汚れ,表面粗さの変化,および表面上の極性基の反転および内部への移行に基づくものである。それらの中でもっとも主要なのは何かを確かめるために,著者らは表面のぬれ特性をsessile drop法による接触角測定によって研究した。その結果,もっとも確からしいのは,極性基の反転(たとえばポリエチレンに対して)および生成した極性基の内部への移行(たとえばシリコーンに対して)と判定した。その理由は,長時間水中に放置しておくと,ふたたび水に対するぬれがよくなるからである。
さらにinverted bubble法を用いて前進接触角および後退接触角を測定することによってポリ(ビニルアルコール)(PVA)とセルロースヒドロゲルの水に対するぬれ特性を研究した。PVAでは接触角にはっきりしたヒステリシスが観察された。このヒステリシスはたぶんヒドロキシル墓の反転によるものである。反対に,セルロースでははつきりしたヒステリシスは現われず,前進接触角も後退接触角も130であった。これはセルロースのくり返し単位の化学構造に基づいて説明された。

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