理科教育学研究
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原著論文
小・中学校における理科の教授/学習活動の頻度からみた指導法の変化
松原 静郎猿田 祐嗣村山 孝鳩貝 太郎
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2006 年 46 巻 2 号 p. 49-56

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抄録

教育課程改訂の方針に基づく教師の理科における指導法の変化を調べるため, 1989年度に小学校5年, 1992年度に中学校2年であった集団と, 2000年度に小学校5年, 2003 年度に中学校2年であった集団のデータを用いて,理科の教授/学習における諸活動の頻度について学級を基礎とした集計を行い,両集団を比較した。授業の進め方においては中学校2年で,教科書中心の授業から補充的な学習や発展的な学習に対応すると考えられる教科書以外の内容も扱った授業へと移り変わり,板書をノートヘと写す授業の頻度では学級による差が大きくなる等の変化が見られた。興味・関心の育成に関しても中学校2年で,現在重視されている理科学習と日常生活との関連を図った授業が増えた。一層の重視が強調されている実験・観察では,小学校5年,中学校2年とも生徒実験や演示実験を多く実施しようとする教師の取り組みが継続的になされており,特に中学校2年では生徒実験,演示実験,野外観察のいずれもその頻度が増し,野外観察については小学校5年でも実施の機会が増えていた。これらの変化のうち,生活関連の授業と生徒実験,演示実験では,中学校2年での頻度が小学校5年での頻度と違いがなくなるまでに増えており,中学校の教師が改善を図って小学校の教師に匹敵するきめ細かな授業を実施してきた結果と考えられる。しかし,知的好奇心の醸成に関しては,それに対応する楽しい(興味深い)理科授業の頻度に変化は認められず,児童生徒の理科が面白いとする態度の割合についても変化は認められなかった。

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© 2006 日本理科教育学会
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