理科教育学研究
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原著論文
「対話」としての学習を志向した理科授業の事例的研究 : 小学校6年「燃焼」を通して
森本 信也瀧口 亮子八嶋 真理子
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1999 年 40 巻 1 号 p. 45-56

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抄録

バフチンによって提案された社会的言語に着目し,理科学習をとらえるとき,学習者により構成される固有の論理と科学の論理という二項対立の枠組みとは異なる,学びの姿を見ることができる。教室における学習の共同性の一方で,社会文化的アプローチは学習をアイデンティティ確立の契機として示峻している。学習者は自他の思考の相対化を求める理科授業において,アイデンティティの確立を図るのである。本研究の目的は,授業実践を例解としてこれらの視点を具体化することにある。学習を教室での学習者の思考のコンセンサスの表現である社会的言語と捉えることによって,次の二つの点が確認された。一つは,流動的な意味をその性質上帯びている比喩的表現は,教室においてその有意味が追究されることによって社会的言語を成立させるための契機となった。もう一つは,ことばの用いられる文脈を特定することにより,文脈を横断して用いられることばが多様な意味内容を保持しながら共有され,社会的言語として成立されていくことが明らかとなった。この学習の共同性の時,教室においてアイデンティティは成立の契機をもつ。これら二つの考察は,理科授業における社会的言語を成立させるための共同注意を促すものと考えられる。

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© 1999 日本理科教育学会
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