理科教育学研究
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原著論文
現職教員におけるアーギュメント構成能力の実態調査
山本 智一神山 真一
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2016 年 57 巻 1 号 p. 53-62

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抄録

アーギュメントは, Toulmin(1958)が提唱する論証の構造であり, 近年, これを応用したものとして, 「主張」と「証拠」及び, それらを結びつける「理由付け」から成るアーギュメントが, 理科教育に導入されている。アーギュメント構成能力は, 児童生徒を指導する教師自身にも必要であるにも関わらず, 現職教員による理科の内容についてのアーギュメント構成能力は, その実態すら未だ示されていない。本研究の目的は, 現職教員を対象に, 理科におけるアーギュメント構成能力の実態を明らかにして, 小学生の実態調査と比較することである。小・中・高等学校の現職教員76名を対象として, 坂本ら(2012)の課題を援用した調査を行い, 回路と豆電球の明るさに関して記述したアーギュメントを得点化した。その結果, 主張に関しては高い点数が得られており, 質問に正確に答えることができているが, 証拠や理由付けに関しては, 記述が不十分であることが明らかになった。特に, 証拠を省略せずに記述したり, 理由付けに科学的原理を用いたりすることには, 小学生の児童と同様の課題が見られた。また, 現職教員のアーギュメント構成能力は, 学校種, 性別, 中学校または高等学校理科免許の有無, 教職経験年数, 担任や専科等としての指導の形態を問わず, 不十分であることが推察された。今後の課題として, さらにサンプリングを整理・拡大して, 本研究で示唆された傾向を詳細に検討することや, 理科において現職教員のアーギュメント構成能力を育成するプログラムの開発が必要である。

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© 2016 日本理科教育学会
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