2022 年 56 巻 6 号 p. 209-213
食道癌患者は高齢者が多く, 進行癌では狭窄による経口摂取量低下や癌腫による慢性炎症から低栄養に陥っているものも少なくない. そのため, サルコペニアを併存している患者も多いと思われる. 一方, 進行食道癌は集学的治療で成績向上が図られており, 本邦では切除可能cStage Ⅱ, Ⅲにおいて術前化学療法後の根治手術が標準治療である.最近は免疫チェックポイント阻害剤を含む術後療法も加えられるようになっており, 術前・術後の継続した栄養管理の重要性は高い. サルコペニアが周術期合併症・長期予後に影響する報告は多いが, 現時点でサルコペニア併存食道癌患者に有効な周術期栄養療法は確立されていない.術前療法による筋肉量の減少, 術後サルコペニアの発症, Performance Status(PS)維持と補助療法なども考慮しながら, それぞれのphaseで適切な栄養管理とリハビリテーションを行うことが求められる. 最終的には前向き試験による至適栄養・リハビリテーション療法の確立と適切な介入による短期・長期予後の改善が期待される.