外科と代謝・栄養
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体液代謝管理研究会・日本輸血細胞治療学会コラボセション
アルブミン製剤の適正使用は外科領域で可能なのか?:東大病院における使用量の推移と外科医の認識
深柄 和彦村越 智曽根 伸治岡崎 仁黒田 誠一郎鈴木 洋史安原 洋
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2017 年 51 巻 3 号 p. 55

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抄録

【はじめに】1980 年代にはアルブミン製剤の世界生産量の1/3 をわが国が使用するに至り、それ以降、アルブミン製剤の適正使用に向けて数々の取り組みがなされてきた。輸血管理料の導入、増点と輸血適正使用加算の新設もそれらの取り組みの中に含まれる。内科系診療科では、特に輸血適正使用加算の新設を契機に大幅な使用量の削減が可能となった部門もある。しかし、外科系診療科では、未だ使用量減少の兆しが見えない。
【目的と方法】今回、当院におけるアルブミン使用量の診療科別年次推移を調査し、外科医のアルブミンに対する意識、アルブミン製剤使用の適応病態に関する認識のアンケートを行ったのでその結果を報告する。なおアルブミン製剤の管理は、2012 年度までは薬剤部、以降は輸血部となり、薬剤部管理の期間は手術室でのアルブミン使用が診療科別のデータに組み込まれていない。
【結果】2007~2012 年までアルブミン使用量は多い順に、消化器内科、肝胆膵外科、移植外科、胃食道外科、大腸肛門外科、血液内科であった。これらの診療科での使用量は病院の全使用量の80%を超えていた。2012 年の輸血適正使用加算の新設の影響も大きかったのか、2013 年度から消化器内科の使用量が一時激減した。しかし、2013 年度以降も前述の各外科系診療科の使用量はほぼ同レベルで推移した。また、手術部での使用量の算入を反映して心臓外科の使用量が肝胆膵外科・移植外科とほぼ同レベルまで増加していた。
 外科医のアルブミンに対するアンケート調査からは、アルブミン製剤の効果として、膠質浸透圧の維持、循環血漿量の増加、浮腫の改善、胸水・腹水の減少を期待し、術前アルブミン値を栄養状態評価の指標として認識していることが判明した。臓器別に投与の意義に対する認識・期待する効果が異なっていた。アルブミン合成を高めるための栄養の重要性は認識されつつ、実際の栄養管理には反映されていない場合も多いことが明らかになった。
【まとめ】本当に必要な病態に対してアルブミン製剤の使用を制限することは、診療上むしろ患者に悪影響を及ぼす危険性がある。しかし、本来の適応にそぐわない使用は適正使用の妨げとなる。今後、外科医もアルブミンの意義、製剤の効果について見直す必要があるだろう。

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