東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O006
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吊り上げトレッドミル歩行の関節角度について~家庭用ビデオカメラを用いて~
*山崎 卓也岩田 紀高本間 雄飛杉山 統哉
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抄録

【目的】近年,脳卒中や脊髄損傷などの神経疾患に対する運動療法として免荷式トレッドミルによる歩行再建が注目を集めている.これら先行研究において歩行の動作解析を行った報告は少なく,一致した見解は得られていない.そこで今回我々は家庭用ビデオカメラを用いて免荷量の違いによる歩行時の関節角度を比較したので報告する. 【方法】対象は,骨関節・神経疾患の既往歴のない健常者6名(男性6名,平均年齢25.8±3.8歳,身長:171.0±3.2cm,体重60.8±2.2kg)とした.本研究の趣旨を説明の上,同意を得た. 家庭用ビデオカメラ(Panasonic社製NV-GS150)をトレッドミル側方から10m離し,床面から0.8mの高さに設置した.被験者は白色の伸縮性のズボンと靴をはき,右肩峰,大転子部,膝関節,外果,第5中足骨頭に半径3cmの黒色のマーカー用シールを貼った.足部にフットスイッチを使用し,立脚期に反応するよう設定した.天井走行用リフターとハーネスを使用し被験者を吊り上げ,静止立位時の0%,30%,60%の免苛量を求めた.上肢は前方で腕を組んだ姿勢にて,トレッドミル上を時速4kmで歩行した.測定順序は3つの免苛歩行をランダムに選択し,各歩行間に5分間の休憩をとり,歩行が安定した後,5歩行周期分の歩行データが得られるまで行った.なお被験者は測定前に歩行練習を行った. 撮影した動画をArea61(URL:http://www.area61.net)と,AVI2JPG(URL: http://www.novolizatiion.hp.infoseek.co.jp/indexj.html)を用い,サンプリング周波数30Hzにて静止画ファイルへ分割した.画像解析ソフトImageJ(URL:http://www.bioarts.co.jp/~ijjp/ij)に取り込み,測定点のデジタイズ処理を行った.得られたデータをExcelに読み込み,ローパスフィルタ(遮断周波数5Hz)を掛けノイズを除去した後,各関節角度,角速度,立脚期割合を求めた.角度は,静止立位時のものを基準として,矢状面における股関節,膝関節,足関節の計算を行なった.統計処理は6人の被験者のそれぞれ5歩行周期分の歩行から得られた関節角度,角速度,立脚期割合の平均値を一元配置分散分析を用いて行った(P<0.05). 【結果】立脚期割合は0%,60%免苛歩行において有意に低下した(64.2±3.5%,54.3±2.7%).膝関節角度は足指離地時において0%免苛歩行に対し30%にて屈曲角度が有意に減少し(-43.3±6.0°,-32.5±5.2°),遊脚期において0%に対し30%と60%にて屈曲角度が有意に減少した(-51.5±1.1°,-39.8±5.2°,-37.2,±10.0°).足関節角度は立脚中期において0%に対し30%にて背屈角度が有意に減少し(7.9±4.0°,0.1±4.1°),足指離地時において0%に対し30%,60%にて底屈角度が有意に増加した(-17.8±2.1°,-30.6±3.0°,-29.9±8.1°). 【考察】当院の吊り上げ装置はハーネスにて身体を垂直に吊り上げるため,免荷量を上げることにより床面と身体の間隔が長くなる.このため免苛歩行では足部接地時間が短くなり,立脚期では下肢を接地させるためにより伸展位に保持する必要があると考えられる.また遊脚期では膝関節の屈曲角度が減少したと推測される.

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© 2007 東海北陸理学療法学術大会
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