電氣學會雜誌
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三相電纜に於ける電位分布に就て
早川 富正
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1927 年 47 巻 473 号 p. 1314-1345

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抄録

本論文は電界の測定にSchwaiger教授の創案したるElectroscope法の實驗的應用の一つとして三相電纜の模型に之を應用したる實驗結果を説きたるものにして此の方法が同樣の電界測定の目的に極めて實用的に且精密に應用し得らるゝ事を明にし且三相ケーブルに於ける電界の状態を測定により明にし其の量大電氣的stresの値を探究し特に紙ケーブルの絶縁層に加はる最大切線的stressの値を知らん事を企てたり。
本實驗結果にて得たる主要なる結果次の如し。
1. 斯の種の電界特に之を計算により知り難き複雜なる電界を實驗的測定によりて知らんには、Schwaiger教授のElectroscope法は實驗方法簡單容易にして且精密なる結果を豫期し得可し。(其の實驗的誤差は1%以下を豫期し得)
2. 三相紙電纜に於けるdielectric stressの最大値は導體の中心を頂點とする三角形状の區域内に存在す。然して斯の如き最大stressの生ずる瞬時に於ては此の區域内の力線分布は近似的に一の導體と共心なる一群の直圓〓表面が等電位面なる如きものにして、此の三角形の重心を過ぎる共心圓〓面が零電位なる如き場合に略一致す。
3. 其の最大stressは次式を以て計算し得。絶縁層に直角なる最大stressは
Emax=Vmax/r 1/lgn2(1+2m)/√3……(A)
絶縁層に切線の方向の最大stressは
Etmax=2/3 Vmax(1+2m)r 1/lgn2(1+2m) √3……(B)
即兩者の比は次の如き簡單なるにて示さる。
k=Etmax/Emax=2/3 1/1+2m……(C)
茲にVmax=導體が大地に對する最大電位
r=導體の半徑
m=紹縁層の厚さ/導體の直徑
即導體の周りの絶縁層の厚さが導體の直徑に對する比が小となる程Emaxに對しEtmaxの割合は大となる。又紙ケーブルに於ては切線の方向の絶縁耐力は法線方向の絶縁耐力に比し著く小なるが故に上記kの値は常に考慮せらるベきものなり。

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