日本森林学会大会発表データベース
第127回日本森林学会大会
セッションID: A33
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学術講演集原稿
ニュージーランドの林業投資に対する社会経済要因の影響
*小坂 香織立花 敏
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抄録

本研究は、小規模所有者である農家等の土地所有者や個人投資家による林業投資への動機付けに、税制改正による優遇策や排出権取引制度の開始がどのような影響を及ぼしたのかを解明することを目的とする。林業投資への動機付けに「儲かること」は必須であるが、数十年先の市場を見通すことは困難であり、国内外の社会・経済・環境等の変化がその収益性を左右する。ニュージーランド(NZ)では、1984年の労働党への政権交代を契機とした行財政改革で農業・林業の補助金は廃止され、自立した林業経営が求められることとなった。現在、NZの人工林で1ha以上の大規模所有者は約6割を占めるが、残りの約4割に含まれる小規模所有者も重要な位置づけにある。ラジアータパイン林業経営では収穫までに約30年を要するが、税制改正等を契機に林業投資が1990年代以降に拡大し、その経営に重要な役割を果した。また、2008年に排出権取引制度の法案が成立し、森林部門から運用が開始されて投資へも寄与した。個人所有者を含むパートナーシップ等により投資家集団を形成する林業投資会社でも、排出権取引から得られる収益を木材収穫以外の収入源としてビジネスチャンスと捉える動きが生じた。

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