日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3026
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造林
複層林に関する研究(_IV_)
17年の経過と現状
*佐々木 重行津田 城栄濱地 秀展野田 亮
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抄録

はじめに 水土保全機能の維持・増進を目的として、スギ、ヒノキの複層林施業が行われている。福岡県でも、1983年から5カ年間にわたり水土保全機能強化総合モデル事業が行われ、その中で複層林造成が約200ha実施された。現在も水土保全機能発揮を目的とした複層林施業が取り入れられているが、受光伐は行われるものの、下木植栽はなかなか実施されていないのが現状である。これは、複層林施業の実態が未だよく分かっていないことが大きいと考えられる。これまでおこなわれた複層林施業についても、造成後から長期にわたり上木、下木の成長経過を測定した報告は少ない。 そこで、本報告では造成から約17年が経過した複層林の下木の成長経過、下木の形状比の変化などについて報告する。2.調査地の概要 調査地は福岡県田川郡添田町にある大藪県営林内に1985年から1988年にかけて8ヶ所設定した。上木と下木の組み合わせは、プロット1_から_3ではスギ(上木)_-_スギ(下木)、プロット4、5はヒノキ(上木)_-_スギ・ヒノキ混植(下木)、プロット6_から_8はヒノキ(上木)_-_ヒノキ(下木)の組み合わせである。設定当初の上木の林齢は27_から_51年生であった。下木の成長測定は樹高、胸高直径についてほぼ毎年1_から_3月にかけて行った。上木の成長測定は2_から_5年毎にやはり1_から_3月にかけて行った。プロット2は2002年に、プロット1、3、6_から_7は2003年に上木の受光伐が行われた。3.結果と考察 設定当初8箇所のプロットの上木は平均樹高14.7_から_18.1m、収量比数0.38_から_0.69であったが、1999年には平均樹高16.7_から_22.0m、収量比数0.51_から_0.82となった。図-1に2003年までの下木の樹高成長を示す。下木の平均樹高は3.25_から_8.47mであった。これは、上木の樹高から推定した地位指数曲線による林齢相当樹高の45_から_95%に相当していた。設定当初、本数密度が高く収量比数が0..68と高かったプロット1での樹高成長が最も低く、林内照度が低かったためと考えられた。また、スギとヒノキを混植したプロット4、5では、ヒノキがスギよりも樹高が高かった。また、下木がスギ、ヒノキのみのプロットを比較しても、ヒノキのほうが、良好な樹高成長を示していた。次に、下木の形状比の経年変化を図-2に示す。プロット1を除いて、形状比はほぼ90前後で推移していた。プロット1で形状比が高かったのは、林内の照度が他のプロットに比べて低かったためと考えられた。プロット2,7,8では1998年から形状比が高くなる傾向がみられた。これは、林内の照度の低下の影響、あるいは上木と下木が成長したことによる密度効果によって形状比が高くなり始めたのが原因かは不明である。今後は、受光伐後の下木の成長の変化について調査を進める予定である。

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© 2004 日本林学会
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