日本林学会大会発表データベース
第114回 日本林学会大会
セッションID: F09
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「角館のシダレザクラ」の現況とその保全策
*蒔田 明史黒坂  登
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抄録

天然記念物「角館のシダレザクラ」の保全の基礎資料とするために、指定木147本の毎木調査を行った。その結果、平均樹高は11.4m, 平均胸高直径は59.0cmであったが、樹高は5.1mから19mまで、胸高直径は28cmから117cmまでと大きなばらつきがあった。27年前になされた調査と比較すると、直径は約9cm増加していたが、樹高は0.9m低くなっており、27年前に高かった木ほど樹高の低下が著しいことが明らかになった。樹勢の衰退と共に、樹幹上部の枯れが進行してきた可能性が強い。生育環境と木の状態との関係を見てみたところ、著しい被陰を受けている木ほど、衰退度が高く、また、シダレザクラ本来の樹形である「枝垂れ」が認められず、また、花の量も少ないことが明らかになった。モミやイチョウ、カシワなどの大木による被陰がシダレザクラの樹勢に影響を与えている可能性が強い。樹冠の広がりを調べてみたところ、通りに面して生育しているシダレザクラは、被陰物のない道路方向に樹冠を広げて光を得ていることがわかった。さらに、数値的な結果を出すことはできなかったが、根圏が十分確保されていない木や踏圧を受けている木もあり、光と土壌条件の両方の改善を考える必要があることが分かった。今後は、これらに留意した保全策を実行していく必要がある。また、樹勢の変化をいち早く把握するために、地元住民によるモニタリング手法の開発も必要である。なお、本調査は、角館町教育委員会による「角館のシダレザクラ緊急調査事業」及び、同「保存管理計画策定事業」の一環として行われたものである。

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© 2003 日本林学会
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