昭和歯学会雑誌
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漢語の歯列を含むパラトグラムの面像処理による標準形態
羅 建平山縣 健佑積田 正和柴田 政宏
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1994 年 14 巻 3 号 p. 183-199

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抄録

多くの語音の調音時に舌が口蓋に一定様式で接触することが知られており, その接触範囲を示すのがパラトグラム (Palatogram) である.しかし舌と口蓋が正常に接触するためには歯列が発音機能に調和していることが前提である.また, 咬合や歯の位置が異常な症例に対して歯列を修復する場合にも舌の調音運動との調和をはからなけれぽならない.そのため, 歯の舌側面および咬合面を含めたパラトグラム法を開発し, 漢語の標準パターンと音響分析によるsonagramを比較検討した.
被験者は, 6名 (26~38歳, 平均32歳) の中国人有歯顎者である.被験音は, 口蓋に調音点を持つと考えられる漢語音のうちの [s, ∫, t∫, t, k, n, r, 1] に相当する語音である.
口蓋および歯列を覆う黒色の特殊塩化ビニールシートの記録板にアルジネート印象材の粉末を散布し, 口腔内に装着し, 発音させると舌の接触部の粉末が湿って黒色となる.これをCCDビデォカメラを通じてビデオプリンターによリハードコピーし, 計測用テレビジョンカメラを通じて画像処理装置 (TVIP-2000, 日本アビオニクス社製) に入力し, 画像解析を行った.
個人のパラトグラムの平均化と標準化のため (1) 各個人の同一被験音の5枚のサンプルから平均的なパターンを求め, (2) 各被験音の外形線を標準歯列へ変換し, (3) 被験音ごとに全被験者のパターンを減光して重ね合わせ, 段階的な濃度の差として示した. (4) さらに被験者中の2/3以上に共通する部分を抽出して標準パターンとした.
これを4カテゴリに分類した.すなわち1型 : [s, ∫], ll型 : [t, n, t∫], III型 : [k], IV型 : [r, 1] である.これらの漢語のパラトグラムは, 総体的にはそれぞれ対応する日本語のパラトグラムと類似しているが [t∫, r, 1] では差異があった.

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