本研究は、江戸時代の藩校の学問領域が老中の任期に与える影響を実証する。藩士の子弟教育のための高等教育機関である藩校が持つ複数の学問領域をもとに、1736~1835年の100年間に渡る10年ごとのパネルデータからネットワーク分析を行った。さらに、同時期の老中の4期の在職データとネットワーク分析結果から負の二項分布モデルによる分析を行った。その結果、老中の所属藩の藩校がネットワーク上のハブとして中核的であることや、情報中心性が高いほど、彼らの在職期間が長期化したことが明らかとなった。これは藩校の学問的ネットワークが藩の情報収集力を高めて老中の長期在職を支えることを通じて、江戸社会へ与える影響の大きさを示唆している。