九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 166
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当院における入院整形外科患者の杖歩行移行基準の有効性
*玉井 友香里草苅 俊和中島 忠伸宮本 知子丸小野 啓介小田 孝明
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抄録

【目的】
在宅において杖歩行と歩行器歩行のADL能力には大きな違いがあり、歩行器歩行獲得後のリハビリは杖歩行の獲得を目標とする事となる。歩行器から杖への移行時期の決定は、間違えると転倒につながる危険性があり、客観的評価が求められる。当院では重心動揺計による平衡機能検査や立位バランス、歩行評価などを実施し、歩行器歩行からT字杖歩行に移行するための基準を設定して活用してきた。今回、この基準の有効性について検討したので報告する。
【対象】
研究の趣旨を説明し了解の得られた整形外科入院患者で、全加重が許可され、杖歩行獲得を目標もしくは達成した症例。症例数は42名(男性7名、女性35名、平均年齢82.3±7.0歳)で、疾患の内訳は、脊椎圧迫骨折9例、下肢・骨盤骨折11例、TKA 術後10例、膝OA5例、他整形疾患7例であった。
【方法】
重心動揺計はアニマ株式会社製グラビコーダGS31Pを使用。当院の杖移行基準は、以下の1~4全てを満たすこととした。1.重心動揺計にて外周面積5.5㎠以下、2.単位面積軌跡長10.0cm以上、3.片脚立位保持時間が左右どちらか3秒以上、4.歩行器での10m歩行18秒以内。この基準を全て満たしたグループをAグループ、一部または全てが満たせなかったグループをBグループと2段階に分類した。歩行能力の評価は、実際のADL能力に即したものとするため、立ち上がり動作を含めた杖歩行能力をPT・OT3または4名で評価し、「杖歩行」「歩行器」の2段階に分類した。検討は、A・Bグループ間で「杖歩行」「歩行器」の人数を比較した。
【結果】
Aグループは、「杖歩行」18名、「歩行器」0名、Bグループは、「杖歩行」4名、「歩行器」20名であった。移行基準を全て満たした症例は全員が杖歩行可能と判断されたが、満たせなくても杖歩行可能な症例も4名いた。また、移行基準の各項目について、「杖歩行」「歩行器」間で有意差を調べたところ、「外周面積」P<0.01、「単位面積軌跡長」P<0.05、「片脚立位保持時間」P>0.05、「歩行器での10m歩行」P<0.01となった。
【考察】
今回の調査で、当院の杖移行基準を満たせば杖歩行の目安となるが、満たせなくても可能性はある事がわかった。該当した4症例に年齢や疾患による偏りは無かった。重心動揺計のデータのうち移行基準に含めていない「単位軌跡長」は、歩行能力との比較で有意差(P<0.01)が認められたので、今後基準への追加も検討していく。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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