2019 年 62 巻 3 号 p. 159-164
目的 : 抜髄・感染根管治療を成功させるには, 機械的拡大後の完全な根管清掃と適切な根管充塡, さらには歯冠部の密な封鎖が必要と考えられている. スミヤー層は機械的清掃時に根管壁に生じる不定形層であり, 無機質および有機質が含まれる. スミヤー層は根管貼薬剤の象牙細管への浸透を妨げるため, 一般的にはスミヤー層をEDTA製剤・クエン酸製剤等にて除去洗浄する. しかしながら, EDTA製剤・クエン酸製剤は根管壁象牙質を脱灰するため機械的強度が減少し, 破折を招く可能性がある. われわれは, 象牙質深部への薬剤浸透を亢進させるナノバブル水を開発した. そこで, 今回ナノバブル水のスミヤー層洗浄効果を検討した.
材料および方法 : in vitro根管モデルを作製し, ナノバブル水5分, 17%EDTA製剤1分, 3%EDTA製剤2分, 20%クエン酸製剤3分, 4.25%クエン酸製剤5分, および蒸留水5分の6種類の洗浄液を根管に作用させ, 走査電子顕微鏡にて観察した. さらに, 機械的強度変化を検討するため, 根管壁からそれぞれ100μmでのビッカース硬さを測定した.
結果 : in vitro根管モデルにおいて, ナノバブル水で5分洗浄すると, 20%クエン酸製剤3分と同程度にスミヤー層をほぼ除去でき, ほかの洗浄液と比べて象牙細管の有意な露出がみられた (p<0.01, n=3). ビッカース硬さを測定すると, ナノバブル水では蒸留水と比較して硬さの減少はみられなかった. 一方, 17%EDTA, 20%クエン酸製剤, および4.25%クエン酸製剤では蒸留水と比較して象牙質から深さ100μmでの硬さの減少がみられた (p<0.05, n=3).
結論 : これらの結果からナノバブル水は根管治療におけるスミヤー層除去に有用であることが示された.