日本歯科保存学雑誌
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原著
マイクロCTによる下顎切歯根管形態の分析
西田 太郎勝海 一郎
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2015 年 58 巻 1 号 p. 42-52

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抄録

 目的 : 下顎切歯は単根歯であるにもかかわらず, 根管充塡後の予後が劣り, 根管治療の難しい歯種とされている. 試料を非破壊的に観察が可能なマイクロCTが, 内部構造の観察にさまざまな分野で用いられている. 本研究はマイクロCTを用いて, 下顎切歯の根管形態を明らかにすることを目的に行った.
 材料と方法 : ヒト抜去下顎切歯50歯に対しマイクロCTによる断層撮影を行い, 三次元構築した画像から, 根管形態, 根管軸の走行方向, 根管長, 根管湾曲度, 根尖孔開口位置および根尖部の根管形態について分析を行った.
 結果 : 根管は50歯中44歯が単根管で, 5歯が2根管1根尖孔, 1歯が2根管2根尖孔であった. 根管軸は53根管中27根管が切縁に, 25根管が唇側, 1根管が舌側に交差した. 根管長は唇舌方向からの観察では平均19.25mm, 近遠心方向では19.05mmと測定方向により差があった. 根管の唇舌的な湾曲は42歯でみられ10度未満よりも10度以上の強湾曲が多かったが, 近遠心的な湾曲は30歯でみられ10度未満の弱湾曲のほうが多かった. 根尖孔と根尖が一致した歯は8歯で認められた. 根尖孔の開口位置は根尖から唇側に平均0.34mm, 近心に0.03mm偏位していたが, 根尖孔の偏位の分布に相関は認められなかった. 根尖部の根管形態は, 近遠心方向からの観察では単一狭窄型が50歯中12歯, テーパー型12歯, パラレル型13歯, フレア型3歯, 根尖分岐型9歯, 複数狭窄型1歯であったが, 唇舌方向からでは単一狭窄型が5歯, テーパー型7歯, パラレル型37歯, フレア型1歯で, 観察方向により形態が異なっていた.
 結論 : 本研究により, 下顎切歯の根管分岐や湾曲による根管形態の複雑さ, また根管軸の唇側偏位による髄室開拡の行いにくさが, 根管治療の難度を高める要因であることを明らかにした.

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© 2015 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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