日本歯科保存学雑誌
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原著
異なる被着体に対する多目的接着システムの接着性について
坪田 圭司石井 亮清水 裕亮古宅 眞由美市野 翔高見澤 俊樹陸田 明智宮崎 真至植原 俊雄長谷川 賢
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2012 年 55 巻 2 号 p. 134-140

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抄録

近年,接着技術の発展に伴って接着性は向上するとともに,接着操作も簡略化する傾向にある.最近,あらゆる被着体に対して,一つの処理材で行うことを目的とした多目的接着システムが製品化された.そこで,多目的接着システムとして開発されたマルチ処理材ビューティボンドマルチおよび付属するシランカップリング剤のビューティボンドマルチPRプラスについて,セラミックス,歯科用合金および歯質に対する接着性について検討を行った.被着体として,アルミナ,ジルコニア,ポーセレン,12%金銀パラジウム合金,ウシエナメル質および象牙質を用いた.被着面を調整し金型を固定した後,コンポジットレジン(ビューティフィルII)を填塞,重合させ接着試片とした.試片は24時間水中保管した後,万能試験機を用いてクロスヘッドスピード毎秒1mmの条件で剪断接着試験を行った.破断後の試片に関しては,走査電子顕微鏡を用いてレジン側を観察した.その結果,多目的接着システムであるビューティボンドマルチの接着強さは,ジルコニアで16.2MPa,アルミナで14.8MPa,ポーセレンで16.6MPa,金銀パラジウム合金で18.1MPa,ウシエナメル質で15.4MPaおよび象牙質で16.8MPaであった.接着強さはアルミナと12%金銀パラジウム合金間で有意差が認められたものの,いずれの被着体に対しても同程度の値を示したことから,臨床応用が十分に期待できることが示された.

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© 2012 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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