日本歯科保存学雑誌
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原著
ハイドロキシアパタイトに対する新規リン酸エステル塩型ハイブリッド界面活性剤の改質効果
森 梨江二瓶 智太郎大橋 桂倉田 茂昭近藤 行成好野 則夫寺中 敏夫
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2010 年 53 巻 2 号 p. 182-190

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抄録

水に易溶性で歯磨剤に添加可能な1分子内にカルシウムと結合するリン酸エステル塩基と,フッ化炭素鎖および炭化水素鎖を有するハイブリッド界面活性剤であるsodium phenyl 1-[(4-perfluorohexyl)phenyl]-1-hexylphosphate(F6H5OP)を新規に合成した.F6H5OPで処理したハイドロキシアパタイト焼結体(HAP pellet)ならびにハイドロキシアパタイト粉末(HAP powder)を用い,表面自由エネルギーおよびタンパク質の吸着抑制能を測定し,プラーク形成抑制効果を基礎的に検討した.表面自由エネルギーは,HAP pelletを1.0〜5.0mmol/lのF6H5OP水溶液で処理後,直後および37℃水中に3,12時間保管後に測定した.HAP powderに対するF6H5OPの吸着量は,F6H5OP水溶液にHAP powderを加えて5〜60分反応後高速液体クロマトグラフィーにて測定した.タンパク質の吸着抑制効果は,F6H5OP水溶液でそれぞれ改質したHAP powderを1,000μg/2mlのホスビチンに加えて10分〜12時間反応させ,ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した.また,改質HAP powderの水による洗浄に対する耐久性と,洗浄後のホスビチン吸着抑制効果についても検討した.F6H5OPで改質されたHAP pelletの表面自由エネルギーは水中保管12時間においてもコントロールと比較して有意に低い値であった.HAP powderへのF6H5OPの吸着量は,改質開始5分で70〜80%,60分後には80〜95%であった.改質HAP powderに対するホスビチンの吸着量は,2時間後で146〜276μgとコントロールと比較して有意に低い値を示した.また,改質HAP powder 2回洗浄後のホスビチン吸着量は反応12時間後も約40%の抑制を受けた.以上の結果より,F6H5OPによるハイドロキシアパタイトの改質は,表面に撥水性および撥油性,ならびにホスビチンの吸着抑制効果を12時間以上にわたって維持し,プラークの歯面付着を抑制しうることが示唆された.

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© 2010 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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