日本歯科保存学雑誌
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原著
ラット切歯歯髄から分離した培養歯髄細胞に形成された石灰化結節の解析
横瀬 敏志大河内 瑠夏和田 隆史高橋 一人金子 友紀松浦 芳久安達 仁天野 義和
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2007 年 50 巻 6 号 p. 776-784

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抄録

歯科保存治療において,vital pulp therapyの発展は重要な課題である.そのためには,基礎的な研究として象牙芽細胞の分化を再現させる実験系が必要である.これまでにわれわれは,ラットの切歯から分離した歯髄細胞を用いて,象牙芽細胞様細胞へ分化させ,象牙質様石灰化基質を形成する系を確立した.しかしながら,象牙芽細胞の分化過程の解析は多く行われているが,石灰化結節の詳細な分析はまだなされていない.そこで本研究の目的は,培養歯髄細胞が象牙芽細胞様細胞へ分化して,形成した石灰化結節の基質の性状を検討し,dentinogenesisを反映しているかを調べることである.20日間の培養期間中に石灰化結節は10日目から形成され,成熟していった.カルシウムの含有量も結節の形成と一致して上昇した.アルカリホスファターゼ活性は培養15日目まで緩やかに増加し,20日目に減少した.Real time PCRを用いたbone gla protein(BGP)と,dentin sialophosphoprotein(DSPP)のmRNAの発現を経時的に調べた結果,BGPは石灰化が始まる15日目から発現がみられ,20日目に向けて増加した.これに対してDSPPは培養5日目から発現がみられ,15日目まで増加し,石灰化が盛んに行われる20日目には減少した.形成された石灰化結節の基質の形態学的解析のためにvon Kossa染色,ならびにinsulin-like growth factor-1(IGF-1),bone morphogenetic protein-4(BMP-4),DSPP,BGPおよびosteopontin(OPN)に対する抗体を用いた免疫組織化学的染色を行った.その結果,培養細胞層にはvon Kossa陽性の石灰化基質が確認された.この基質はIGF-1,BMP-4,DSPP,BGPおよびOPN抗体の局在が確認された.これらの結果は,本培養系に形成された石灰化結節が,象牙質形成を反映していることを示しており,本培養系がdentinogenesisの基礎研究を行うための有用なツールになることが示された.

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© 2007 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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