福祉社会学研究
Online ISSN : 2186-6562
Print ISSN : 1349-3337
┃自由論文┃
福祉国家に対する態度の多次元性
ISSP のデータを用いた構造方程式モデリング
池田 裕
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 17 巻 p. 247-266

詳細
抄録

福祉国家に対する態度は,一次元的に測定されることが多い.一次元性の仮定は,特定の福祉国家プログラムの支持者が,他のすべての福祉国家プログラムをより強く支持すると予測する.しかし,いくつかの研究は,福祉国家に対する態度が多次元的であることを示唆している.すなわち,特定の福祉国家プログラムをめぐる対立は,他の福祉国家プログラムをめぐる対立と質的に異なるかもしれない.本稿は,国際社会調査プログラム(ISSP)のデータを用いて,日本の福祉国家に対する態度の構造と規定要因を検討する.福祉国家に対する態度の構造を正確に表現し,福祉国家をめぐる対立にプログラム間の差異があるかどうかを明らかにするのが目的である.

 カテゴリカル確証的因子分析によれば,福祉国家に対する態度は完全に一次元的ではなく,プログラム間の差異を考慮する必要がある.構造方程式モデリングの結果は,疾病と老齢に関する政策をめぐる対立が,失業と貧困に関する政策をめぐる対立と質的に異なることを示している.たとえば,疾病と老齢の次元では等価所得の効果が統計的に有意でない一方で,失業と貧困の次元では等価所得が有意な負の効果を持つ.低所得者が福祉国家をより強く支持するのは,彼らが疾病と老齢に関する政策ではなく,失業と貧困に関する政策をより強く支持するからである.このように,本稿の知見は,個人が福祉国家を支持する理由を理解するのに役立つ.

著者関連情報
© 2020 福祉社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top