2019 年 68 巻 1 号 p. 24-29
皮膚は外界からの様々なストレスから身を守るため,損傷時には迅速な回復が要求される。この修復反応を創傷治癒と呼び,多くの過程により成り立っている。その中でも表皮細胞,線維芽細胞の増殖と創部への遊走は創部面積の縮小や組織再構築など,創傷治癒において非常に重要である。
そこで,創傷治癒過程において重要な役割を果たす表皮細胞に対するラクトフェリン(Lf)の作用を検討した。また,基底膜の分解や血管新生を促して創傷治癒に関与するマトリックスプロテアーゼ(MMP)-2およびMMP-9の遺伝子発現と酵素活性に及ぼすLfの影響について解析を行った。その結果,Lfは表皮細胞の細胞増殖や遊走を促進し,MMP-9の活性を増強することから,これらの作用を通じて創傷治癒を促進することが示唆された。