日本海水学会誌
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チタン酸の一般的性質
海水中のウラン採取 (VIII)
尾方 昇井上 信子
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1971 年 24 巻 4 号 p. 149-153

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抄録

海水中のウラン吸着剤として用いたチタン酸について, X線回折, 赤外吸収スペクトル, 電子顕微鏡, 熱分析, 電気泳動および酸に対する溶解性について一般的性質を検討した. Ti (SO4) 2を常温でアルカリ溶液により中和して調製したチタン酸 (常温中和法チタン酸), 高温でアルカリにより中和したチタン酸 (高温中和法チタン酸) および酢酸アンモニウムを添加し湯浴上で加熱して調製したチタン酸 (酢酸アンモニウム法チタン酸) は外観が綿状で見掛け体積が大きく, 線状分子で非晶質であり水分が一定量水和している.水和数は常温中和法チタン酸TiO23/2H2O, 高温中和法チタン酸TiO2・H2O, 酢酸アンモニウム法チタン酸TiO2・5/3H2Oである.これらの線状分子はからみ合つてコロイド粒子を作る.表面は海水中で負電荷を有する. Ti (SO4) 2に尿素を加え90℃で見掛け体積が小さく, 立方体の結晶を形成する.永和数はTiO2・H2Oでアナターゼに水和したものと考えられる.表面電位は負であり, 他のチタン酸より電位は低い.煮沸状態では酸に対する溶解性はチタン酸の種類に関係なく酸濃度に支配されるが, 常温では常温中和法チタン酸の溶解性は高い.しかし長時間放置するとその溶解性は次第に低下した.

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