耳鼻咽喉科展望
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stage III・IV舌癌の治療成績について
三谷 浩樹鎌田 信悦苦瓜 知彦米川 博之
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キーワード: 舌癌, 生存率, 術前照射
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2003 年 46 巻 2 号 p. 134-143

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抄録

当科では1946年から舌癌の治療を行っており, 1980年代初期までは臨床進行度にかかわりなく原発巣の治療方法はラジウム小線源が主体であった。1946年から1970年までのT3以上の進行舌癌における5年粗生存率は20.3% (N=137) で思わしくなく, それまでの照射方法を改善し, DP皮弁を用いた切除再建法を導入, さらに大胸筋皮弁を用いた手術治療に移行したことで1971年から1980年においてはT3+T4舌癌の5年粗生存率は37.0% (N=40) まで向上した。とりわけ1982年からの機能保存と治療成績向上の両立を目指した遊離皮弁による再建術が確立したことはその後の治療を一変させ, 嚥下機能を保ちつつ拡大切除が行えるようになったことにより, T3+T4舌癌の5年粗生存率は51.6% (N=126) が得られるまでになった。
本稿では過去20年間にわたる手術を主体としたstage III・IV進行舌癌の治療成績を示した。1981年1月から1999年12月までに根治手術治療を行ったstage III・IV舌扁平上皮癌, 未治療例192例を対象とし, 以下の成績を得た。5年粗生存率 (疾患特異的生存率) はstage III : 65.3% (71.8%), stageIV : 38.2% (40.0%) でT分類別5年原発巣制御率はT1 : 100%, T2 : 83.8%, T3 : 81.7%, T4 : 77.4%, 5年頸部制御率は77.1%であった。
当科では原則として40Gyの外照射を行ってきたが, 原発巣切除標本を組織学的に術前照射の効果別に再分類し, 治療成績と比較することで補助療法としての意義を検討した。その結果, 照射無効群は40% (53/132), 照射有効群は60% (79/132) の出現頻度となり, 原発巣・頸部制御率・粗生存率において両群間に有意差 (p<0.05) をみとめたことから, 40Gy程度でも放射線の治療効果を享受することが可能な症例があり, 手術療法単独では成績向上に限界がある進行舌癌の治療において術前照射は有効な補助治療の一方法である可能性が示唆された。

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