1999 年 42 巻 5 号 p. 483-492
突発性難聴症例47耳に対し蝸電図検査を行い予後推定への有用性について検討した。蝸電図検査は鼓室外誘導法で行った。刺激音にはクリック, 短音, 持続時間50msのlong tone burstの三つを用いた。蝸電図所見の中でAP, CMの検出閾値, delayed CMの出現率, SP・AP振幅比 (SP/AP), SPの極性を指標とした。
APの検出閾値が低い例や, delayed CMの出現率が高い症例では予後良好群と不良群との間に有意差がみられ, これらの所見は予後推定に有効な因子と思われた。APの検出閾値に関しては40~60dBnHL前後が予後の良し悪しを分けるのに妥当な値ではないかと考えた。
一方CMの検出閾値, SP/AP, SPの極性は予後推定には有用な因子とは思われなかった。
予後良好因子であるAPの低い検出閾値やdelayed CMの高い出現率を示す病態として, 蝸牛の基底板における非線型性の存在と同調曲線の鋭敏性の存在が示唆された。