耳鼻咽喉科展望
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臨床
頸部リンパ節転移を契機に診断に至った甲状舌管癌の1症例
藤田 佳吾平野 隆森山 宗仁児玉 悟鈴木 正志
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2016 年 59 巻 2 号 p. 93-98

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抄録

 甲状舌管は通常胎生8週までに退化消失すると言われているが, 一部残存した甲状舌管遺残組織または甲状舌管嚢胞に癌が発生すると言われている。 今回, リンパ節転移を契機に術前に診断に至った甲状舌管遺残組織から発生した乳頭癌症例を経験したので報告する。 症例は49歳男性, 前頸部腫瘤を主訴として近医耳鼻咽喉科を受診し, 腫瘤摘出したところ甲状腺癌による転移性リンパ節と診断され, 当科紹介受診となった。 画像診断により前頸部正中に甲状舌管嚢胞様所見を認め, これを原発巣と同定し Sistrunk 法による摘出と右頸部郭清術を行った。 病理所見にて頸部正中の小結節性病変は, 正常甲状腺組織と共に腫瘍細胞の乳頭状増殖を認めたため甲状舌管癌と診断され, 摘出したリンパ節も同様の腫瘍細胞増殖を認めた。 諸家の甲状舌管癌の報告例では, 甲状舌管嚢胞として摘出手術を受けた際の永久病理診断で確定診断される症例が多く, 本症例のように甲状腺癌転移性リンパ節を契機に診断に至った甲状舌管癌は稀である。 病理組織学的に甲状腺癌による頸部リンパ節転移と診断された場合は, 甲状腺不顕性癌のみならず, 甲状舌管遺残組織から発生した乳頭癌も念頭に精査加療を行うことが肝要である。

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