1997 年 1997 巻 48 号 p. 1-18
古代から現代にいたるまでの哲学は、自我ないし人格の問題を、それぞれの時代に応じて、その時代に特有の概念装置を通して、思い考えかつ生きていた。自我・人格は、ときに「魂」であり、「小宇宙」であり、また「社会契約」の主体であり、「知覚の束」であった等々。自我の同一性という古くまた新しい問題をめぐって、「実体」「因果」「反省」等の概念が交錯する。これらの思考の遺産を、今日的状況の中から、 (ときに東洋的思考の伝統との接点をさぐりながら) 、あらためて根底にたちかえって検討してみたい。