日本小児血液・がん学会雑誌
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症例報告
腫瘍生検の染色体転座の同定によって診断確定できた炎症性筋線維芽細胞腫の1例
篠原 珠緒渡邊 敦杣津 晋平大城 浩子赤羽 弘資合井 久美子犬飼 岳史森山 元大近藤 哲夫大西 洋杉田 完爾
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2016 年 53 巻 3 号 p. 289-293

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抄録

炎症性筋線維芽細胞腫(inflammatory myofibroblastic tumor, IMT)は,半数の症例にALK遺伝子の再構成が確認され腫瘍性疾患として位置付けられている.しかし,ALK遺伝子の再構成が陰性の症例では,病理学的に類似する炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor, IPT)との鑑別が困難である.今回,左側の顔面神経と動眼神経麻痺を主訴とする7歳男児例を経験した.左咀嚼筋間隙に腫瘤を認め,生検組織のHE染色で紡錘形細胞の増加と炎症細胞の浸潤を認めたが,免疫染色でALKは陰性で,in situ hybridizationでもALK遺伝子の再構成は検出されなかった.生検組織の染色体解析において,解析した20細胞中5細胞でt(1;11)(q32;q23)が確認されたため,IMTと診断した.Cyclophosphamide,vincristine,pirarubicin,cisplatinによる化学療法を施行したところ腫瘤は縮小し,治療終了から3年半を経て再発の徴候はない.腫瘍組織の染色体解析はIMTとIPTの鑑別に有用であり,t(1;11)(q32;q23)はIMTの新たな転座である可能性が示唆される.

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© 2016 日本小児血液・がん学会
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