小児歯科学雑誌
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心身障害児施設における外来歯科診療の実態
脳性麻痺児の取り扱い難易度の評価および治療内容について
鈴木 康生山下 登佐々 竜二岩本 都
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1992 年 30 巻 5 号 p. 882-892

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抄録

重度な心身障害児を含む脳性麻痺児の外来歯科診療の可能性と問題点を検討する目的で,その治療時の取り扱い難易度の評価を行った。
対象は心身障害児施設内に入院(園)する軽度~重度の脳性麻痺児と通院の外来児である。今回,調査対象としたのは施設内歯科室で治療を行い,観察記録をとどめた55名である。評価基準は「協力状態」「顎・顔面の緊張,不随意運動の状態」「呼吸状態,口腔内異常反射の状態」を総合して判定した。評価はランク0~Vの6つに分類した。その結果,
1)初回治療時の評価では"治療上やや支障あり・困難を伴う"のランクII・IIIの者が50%強を占めていた。
2 ) 一口腔単位での齲蝕治療完了者は2 6 名で, その平均治療回数は4 . 2 回, また, ランクH~IVの比較的治療困難な者の中でも約半数が治療を完了していた。
3)外来診療が3回以上継続して行われた者の難易度評価の変化状況をみると,比較的軽度の者では「良化」r不変」がやや多いのに対し,重症児,通院児では「変動」「悪化」の者が若干増える傾向もみられた。また,こうした障害児では歯科治療による変化は,かなり個人差があることがわかった。
4)処置と難易度との関係では,所要時間に多少影響があることがわかった。以上の結果から,心身障害児でも外来治療の可能性が十分あることが確認されたが,一部の重度脳性麻痺児では外来でのリスクも大きく,鎮静法や全身麻酔下治療が適していることも示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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