小児歯科学雑誌
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成長発育に伴う小児咀嚼筋の瞬発力に関する研究
広瀬 永康
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キーワード: 咬合力, 握力, 筋電図, 瞬発力, 小児
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1988 年 26 巻 1 号 p. 97-111

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抄録

本実験は小児の咀嚼機能を四肢筋の成長発育と関連させ評価する目的で咬合力と握力発現時の筋活動について検討した.被検者は全身的に健康で顎口腔機能に障害のない,乳歯列期小児10名(G1),混合歯列期前期小児10名(G2),混合歯列期後期小児10名(G3),および永久歯列期10名(G4)の計40名を対象とし,筋電図は,右側側頭筋および咬筋より双極表面電極にて導出した.また同様に握力発現時の前腕屈筋の筋活動も観察した.
その結果
1)最大咬合力は,G1からG2の増加量より第一大臼歯で咬合させたG2からG3,G3からG4への増加量が著しく大きく,また最大咬合力発現時間は減少する傾向がみられた.
2)咬合力が増大するに従って咬みこむ速度も大となり,咬合力だけでなく咀嚼筋の瞬発力も増齢的に大きくなることが認められ,また咬合開始から580msecまでの積分値では,咬筋活動量及び総筋活動量は増齢的に増加が認められた.
3)側頭筋と咬筋の筋活動量の比較では,G1,G2が側頭筋主働型でG3,G4が咬筋主働型で第一大臼歯が咬合参加にする頃側頭筋主働から咬筋主働への転換が認められた.
4)咬合力と握力との関係では最大咬合力と最大握力,最大咬合速度と最大握力速度に正の相関を認め,四肢筋と咀嚼筋の機能的発達に共通点が認められた.咬合力と握力では咬合力の方が強く,また瞬発力も四肢筋より咀嚼筋の方が強かった.
以上の結果より小児の成長発育による咀嚼筋の咬合瞬発力の著しい増加は混合歯列期後半からの咬筋の成長発育が大きく関与していることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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