小児歯科学雑誌
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(NH4)2MoO2F4によるラット実験齲蝕抑制効果
谷口 学泉谷 明落合 伸行大嶋 隆祖父江 鎮雄西村 英明
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1981 年 19 巻 1 号 p. 150-158

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抄録

フッ化ジアンミン銀は,臨床実験および動物実験の結果より,齲蝕予防や齲蝕進行抑制効果を示すことが明らかにされている。しかし,この薬剤には,齲蝕部や未成熟永久歯を黒く着色させる欠点があり,より広い臨床応用を困難にさせている。
疫学的研究および動物実験の結果,モリブデンにも,抗齲蝕効果があると考えられている。したがって,我々は,フッ素とモリブデンを含有する新しい抗齲蝕剤(NH4) 2MoO2F4を開発した。今回, ラット実験齲蝕系をもちいて, (NH4) 2MoO2F4の抗齲蝕作用を, 市販のフッ化ジアンミン銀や酸性フッ素リン酸溶液(APF)と比較して,その効果を検討した。
動物には,齲蝕誘発性飼料2000を与え,Streptococcus mutans MT7038Rを感染させた。感染開始より4週間目に,上記フッ素剤と対照群として蒸留水を,ラットの下顎臼歯部に塗布した。塗布は,実験期間中1週間に1回計8回行った。実験動物はすべて感染後84日目に屠殺し,プラークスコアおよび齲蝕スコアを算出した。実験の結果,体重の増加においては感染群の間に統計学的に有意な差は認められなかった。(NH4) 2MoO2F4においては,フッ化ジアンミン銀と同様の齲蝕進行抑制効果が認められた。さらに,(NH4) 2MoO2F4は,フッ化ジアンミン銀のように,歯牙を黒く着色させる事がなかった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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