小児歯科学雑誌
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総説
Streptococcus mutansにおける新規コラーゲン結合タンパクの同定と感染性心内膜炎に対する病原メカニズムの解析
野村 良太
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2014 年 52 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

齲蝕の主要な病原細菌であるStreptococcus mutansは,感染性心内膜炎の起炎菌としても知られている。S. mutansは血清学的にc/e/f/kの4種の血清型に分類される。口腔内から分離されるS. mutans菌株の約70~80%はc型,約20%がe型に分類されるが,f型株やk型株は5%以下の頻度でしか存在しない。一方で,感染性心内膜炎患者から摘出された心臓弁ではk型が高い頻度で検出される。感染性心内膜炎の病原因子の1つとして,コラーゲン結合タンパクであるCnmが2004年に同定され,一部のS. mutans株がコラーゲンへの結合能を有することが明らかになった。そこで,kS. mutans株を用いて分析したところ,その多くがコラーゲン結合能を有するにもかかわらず,Cnmを保有しないことが分かった。実際に,k型株のゲノムDNAを用いて,分子生物学的手法により新規コラーゲン結合タンパクをコードする遺伝子の同定を行い,そのタンパクをCbmと命名した。Cbm陽性菌株は,Cnm陽性菌株よりも有意に高いコラーゲン結合能を有しており,感染性心内膜炎に対して高い病原性を示す可能性が考えられた。また,コラーゲン結合タンパクを保有している株のうち,特に分子量約190kDaのPAタンパクを発現しない菌株では,ヒト臍帯血血管内皮細胞への高い付着能および侵入能を有していることも分かり,これらの菌体表層タンパクが感染性心内膜炎の主要な病原因子の1 つである可能性が示唆された。

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© 2014 日本小児歯科学会
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