2012 年 30 巻 5 号 p. 279-286
膝関節の主な疾患である変形性膝関節症の早期診断のために軟骨成分比の変化の検出が求められている.本論文では,MRI画像を用いた軟骨成分の含有量評価に向けた基礎研究として,軟骨の主成分であるプロテオグリカン(PG)とコラーゲンのファントムを作成し,MRI画像解析を行った.撮影装置には,臨床用MRIとMR顕微鏡の2種類の装置を使用した.臨床機では複数のシーケンスで撮影し,各成分含有量と基準溶液との信号強度比の相関性を評価した.一方,MR顕微鏡では,PGのファントムの緩和時間を測定し評価を行った.この結果,PGのファントムにおいて,PG含有量と等方的3D高速スピンエコー撮像法であるT1CUBEで信号強度比に高い相関が見られた.また,PGのT1緩和時間は含有量に伴って短縮し,T1CUBEの信号強度比と整合性のある結果を得られた.変形性膝関節症の診断として,変性軟骨と同信号値のファントムを患者と同時に撮影し,信号強度比を取得することで,生体内軟骨の成分含有量を高精度に評価できる可能性がある.