2018 年 86 巻 1 号 p. I_35-I_45
圃場分散は,多くの地域において農業の生産性を低下させると考えられているが,その十分な解決の方策は講じられていない.圃場分散の影響を正確に評価し,社会経済的な改善施策を検討するためには,圃場の位置や道路地図といった集落全体での地理情報と,各農家の実際の通作経路を把握することが望ましい.本研究では,GPSトラックデータを用いて圃場と農道および各農家の移動経路を判別し,農家の経路選択を評価する一連の新手法を開発した.その手法を重度の圃場分散に直面する中華人民共和国の農村に適用したところ,圃場分散が通作時間を増大させ,一部の農家は勾配の大きな経路を避け遠回りとなる経路を選択していたことが明らかになった.