フィリピンの農業開発計画に対し, 日本の政府開発援助(ODA)はその援助戦略に沿って多面的な支援を展開してきた.しかし, 援助戦略はフィリピンのニーズに完全に合致してはおらず, 必要とされる開発計画が支援されないケースもある.そこで, 開発計画への直接的な支援である開発調査, 無償資金協力及び円借款について, フィリピンの農業開発への援助実態を援助戦略との関連を軸に評価し, ODA実施上における課題とその改善案を検討した.その結果, 援助戦略と現実のニーズにはギャップがあること, 戦略の転換に対応できず効果的な灌漑開発が実施できなくなっている等, ODA実施上の課題を明らかにした.必要な農業開発計画を援助により効率的に実施するには, フィリピンのニーズにより即した戦略と, 現在の課題を的確に取り入れた開発調査を実践するなどの, 援助制度の改善の必要を示した.