農村地域における洪水対策として,水田の雨水貯留機能を活用する取組みが注目されている。本報では実際に豪雨が発生した福岡県宝満川流域を対象に,田んぼダムの導入が河川流量に及ぼす影響を検討した。その結果,田んぼダム導入による雨水貯留機能は降雨当初で効果が確認できた一方で,特に後方集中型の豪雨では降雨ピーク時に水田空き容量を確保できないため,その効果が減衰することが示唆された。また,水田畦畔を超えて水田域一帯が冠水した地域における,連続撮影画像と水位連続記録を分析した。その結果,平成30年7月豪雨時には約25haの水田地域に約50万m3を超える雨水が貯留されていたことが明らかになった。