2012 年 80 巻 12 号 p. 987-992,a1
欧州において,農業部門については農業用水に関する施策も含めて共通農業政策がその枠組みおよびそれに基づく政策手法を決定している一方で,水資源については「水枠組み指令」が,セクター横断的な政策の基盤を提供している。しかしながら,全水利用セクター間の配分の効率性を最大の関心事項とする水枠組み指令と,農業生産の継続のための多額の農家支援を行っている共通農業政策の間には潜在的な対立事項を含む。本報では,潜在的な対立事項として水枠組み指令でその導入が指示されている全費用を考慮した水利用に対する価格付けに着目し,共通農業政策との整合性確保をめぐる議論を概観し,それが農業政策および水政策に与える影響を論じる。