膵癌144例と肝細胞癌70例を対象に,術前の血管撮影像に示される既存血管の壁自体の変化と走行の変化,腫瘍新生血管の多寡,血流動態の変化などを観察し,これら実質性臓器癌の治療面からみた病態を検討した.血管像で圧排性変化の優位なものは膨脹性発育型腫瘍として,浸潤性変化を主体とするものは浸潤性発育型腫瘍として,それぞれ肉眼的にも確認され,前者は後者に比し,膵癌では膵被膜を突破しにくく,肝細胞癌ではA-P shunt出現率が低いことなどが示され,ともに易切除性で予後も相対的に良好であつた.腹部実質性臓器癌の発育進展様式,切除可能性,生存期間など癌の臨床的悪性度の一部は,術前の血管撮影像によく反映されていた.