1981 年 78 巻 5 号 p. 1040-1046
潰瘍性大腸炎と妊娠,出産との関連性についての報告は少ない.今回,妊娠,出産を契機として発症した本症女性患者3例(5回の妊娠)の臨床検討では,3例は妊娠を契機として発症あるいは増悪し,そのうち2例(2回)は出産後に増悪した.この間の治療は全例に対しSalicylazosulphapyridine (SASP)を投与した.
これらの臨床成績から,本症女性患者で妊娠を希望した場合,1年間以上の緩解期間を置くのが望ましいと考えた.また,妊娠中あるいは出産後の治療薬剤としてはSASPを用いたが,妊婦,胎児ともに影響はなかつた.副腎皮質ステロイドホルモンは母体,胎児への副作用を考慮し,慎重に投与すべきと考える.