2003 年 100 巻 2 号 p. 177-184
症例は69歳,男性.平成8年より肝細胞癌に対してTAE,肝切除およびPEITを施行し,原発巣のコントロールは良好であった.しかし,平成11年孤立性縦隔転移を来したため,放射線治療を施行した.その結果,縦隔転移は縮小したが,平成12年腎転移が出現し,その後副腎,肺転移を来し死亡した.病理解剖の結果,原発巣である肝臓に腫瘍の残存は認められなかった.本症例においては肝内の腫瘍がコントロールされていたにもかかわらず,縦隔転移により不幸な転機をとった稀な症例と考えられた.