2017 年 114 巻 12 号 p. 2097-2107
現在の本邦における診断基準では,慢性膵炎は,慢性膵炎確診・準確診・早期慢性膵炎・慢性膵炎疑診の4病態に分類されている.実臨床においては,いずれも臨床徴候と画像診断の組み合わせで診断は比較的容易に可能であるが,慢性膵炎という疾患を念頭に置いて診療を進めなければ,確定診断に至ることが難しいことも少なくない.この観点から,精査のステージに上げるための臨床徴候や病歴を十分に理解しておくことは極めて重要である.また,本邦が世界に先駆けて提唱した早期慢性膵炎診断基準では画像診断として超音波内視鏡(EUS)の役割が大きいが,より正確な診断を行うためには,各EUS所見の理解とともに,慢性膵炎に影響を与える可能性のある臨床像(飲酒,喫煙,急性膵炎の既往など)を把握し,総合的に判断する必要がある.一方で,近年では早期診断におけるEUS-elastographyによる膵硬度測定やセクレチン負荷MRIなどの有用性も報告されており,慢性膵炎早期診断の幅は確実に広がりをみせている.