自然免疫機構の制御異常が炎症性腸疾患の病態に関与することは,疾患感受性遺伝子としてのNOD2遺伝子変異の同定以来注目されてきた.最近のGWASの進歩により続々と炎症性腸疾患の疾患感受性遺伝子が同定され,その中には自然免疫に関与するサイトカインやシグナル伝達分子に加え,オートファジー,ERストレス,インフラマソームといった細胞レベルでの恒常性維持に関与する分子が含まれている.また腸内細菌叢の研究が進み,特定の腸内細菌やその菌体成分が宿主の腸管免疫を制御していることも明らかになりつつある.これらの新たに登場した病態論を解説し,炎症性腸疾患における自然免疫機構の破綻について考察する.