日本消化器病学会雑誌
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総説
大腸癌肝転移治療の新たな展開―外科的立場から
大久保 貴生高山 忠利檜垣 時夫東風 貢
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2009 年 106 巻 10 号 p. 1413-1420

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抄録

大腸癌肝転移に関して外科的手術は長期予後の改善が期待できる唯一の治療法である.大腸癌肝転移切除後の5年生存率は20∼50%といわれている.積極的な手術適応の拡大によって,予後不良因子をもつ症例でも長期生存が報告される一方で,肝切除後の再発も多く,初発再発部位としては残肝再発が最も多いが,多くの患者に肝外再発例も認められている.大腸癌,特にステージIII結腸癌の術後補助化学療法については,有用性が確立している.しかし国内外において肝転移切除例に対する再発予防のための補助化学療法をするべきか否か,補助化学療法を行うとすればどのような治療レジメンがよいのか,の問題については客観的な証拠は得られていない.そのため補助化学療法の期間やタイミング(術後,術前,術前後),患者の選別などに関してさらなる検討が必要である.今後,ベストコンビネーション,至適投与スケジュールなどを模索する臨床試験が望まれる.さらなる生存率の向上には補助化学療法を含めた集学的治療に期待が高まっており,本稿では,大腸癌肝転移の肝切除と化学療法について概説する.

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© 2009 (一財) 日本消化器病学会
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