1993 年 22 巻 1 号 p. 177-181
ラ氏島を包埋培養する際に、ゲル中にラ氏島の1種のアゴニストであるグルコースを有したポリスチレン誘導体を用い、ラ氏島の機能発現性を検討した。はじめに蛍光標識したポリマーとラ氏島の相互作用を検討した結果、ラ氏島は糖側鎖末端がガラクトースであるポリマーより、グルコースを有したポリマー(PVMA)と相互作用し易いことがわかった。この結果をもとに、HEMAとのランダム共重合体を合成し、アガロースゲル中に共存させると、0.005% (W/V) VMA-HEMA co-polymerを共存させた時に、グルコース濃度に応じた、ラ氏島からのインスリンの放出能が最も高くなることがわかった。一方、1.0% (W/V)のアガロースゲルのみでは、培養初期において、すでにグルコース応答能及びインスリンの放出能が消失していた。このようにラ氏島の一種のアゴニストである、グルコースを有したポリマー共存下で培養を行うと、ラ氏島の機能維持が向上したことは、非常に興味深い知見である。