人工臓器
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繁用人工臓器の現況と将来
―人工弁―
徳永 皓一川内 義人
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1990 年 19 巻 3 号 p. 1002-1006

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抄録

人工弁の耐久性と抗血栓性及び再弁置換について教室の成績を総括し、人工弁の将来についても展望した。大動脈弁単弁置換での血栓塞栓症(TE)の発生は、機械弁9例12回(2.5±0.7%/P-Y)、生体弁2例2回(0.5±0.3%/P-Y)に認められた(p<0.01)。人工弁機能不全は、機械弁1例(0.2±0.2%/P-Y)、生体弁5例(1.2±0.5%/P-Y)に認められた(p<0.05)。遠隔期の薬物療法を全く行わず社会復帰している率は、機械弁群2.9%、生体弁群37.7%であった(p<0.0001)。僧帽弁単弁置換でのTE発生は、機械弁11例19回(4.1±0.9%/P-Y)、生体弁21例27回(2.2±0.4%/P-Y)に認められた。人工弁機能不全は、機械弁2例(0.4±0.3%/P-Y)、生体弁24例(2.0±0.4%/P-Y)に認められた(p<0.01)。右心系弁置換での人工弁機能不全は生体弁1例(0.5±0.5%/P-Y)、機械弁4例(7.3±3.6%/P-Y)に認められた(p<0.04)。弁関連合併症は生体弁1.9±1.0%/P-Y、機械弁9.1±4.1%/P-Yであった(p<0.001)。再弁置換術では、二弁置換例57%(8/14)、単弁置換例21%(11/53)が死亡し、両群間の生存曲線に有意差を認めた(p<0.001)。生体弁PTFに対する単弁再置換の5年生存率は96±4%であった。左心系の機械弁では優れた耐久性が確認され、生体弁では8年を過ぎる頃からPTFの発生が加速度的に多くなった。右心系の機械弁は血栓弁の発生が多かった。PTFに対する単弁再置換の予後は良好であった。以上の結果から、大動脈弁単弁置換及び右心系弁置換では生体弁の利点(抗血栓性)を生かせるものと考えでいる。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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