日本温泉気候物理医学会雑誌
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皮膚温分布と経絡, 経穴現象
西條 一止
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1976 年 39 巻 3-4 号 p. 1-96

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抄録

鍼灸療法は, 東洋に古くから発達した物理療法である。
経絡, 経穴は, 臓腑経絡系として東洋医学における人体構造機能系であり, 鍼灸療法の診断, 治療の根幹である。
鍼灸療法の診断は, 臓腑経絡論を論拠として自覚症状及び体表で観察できる諸現象の総合的, 体系的把握によりなされる。
著者は, 鍼灸療法の科学化の一環として, サーミスタ温度計, thermography を用い, 健康成人, 計88名, 患者, 計26名を観察対象として東洋医学における温度情報の科学的観察検討を行なった。
次いで, 経絡, 経穴について, 経絡, 経穴は, 人体における調節系, 連絡系としての神経系, 循環器系が関与し, これらを中心として総合構成された体系であると考え, 特に, 経絡経穴系において, 体表循環系がどのように関与しているかを検討した。
その結果, 健康体, 病体全身皮膚温分布の観点から, 循環器系, 特に体表から触知できる動脈系が古代において一部の経穴として捉えられていたことを実証した。また, この周囲より0.5~1℃高温のライン・ポイント (経穴) に物理的点状刺激 (鍼灸) を与え, 生体反応を観察し, 手・足部の動静脈吻合による血行動態の調整が, 鍼灸治療の治効メカニズムの一つをなすことを示した。更に, 新しい治療方式である鍼麻酔方式の自律機能調整作用に実験的論拠を与え, これをSMON患者に臨床応用し成果を得た。
thermography により得られる異常温度分布所見は, 非特異的病的状態の指標として, 保健医学の視点, 東洋医学の立場からは, 病像把握の科学的現象観察法のひとつとして高く評価できる有用な所見である。

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