2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s236_3
【目的】近年,欧州を中心に心停止後体内において体温条件で局所灌流(Normothermic Regional Perfusion)を行い,臓器機能維持,回復し移植につなげる技術が広がりつつあり,さらに室温域での局所灌流への期待がある.こうした中,回復の期待される臓器に対して機械灌流による移植前機能評価の重要性が議論されている.本研究では,心停止ドナーに対して,ECMOを用いた室温局所体内灌流を行った臓器に対して,機械灌流を用いたpH動態による機能評価手法について提案し,従来評価指標との比較検討を行う.【方法】体重20kgのブタ肝臓を用い,ECMOを用いた室温体内局所灌流を行い,そののちにHTK液を用た室温機械灌流を行った.室温機械灌流中の機能評価としてpHの変化に着目して計測,評価指標を算出した.機械灌流後に体温下での自己血を用いた再灌流を行い再灌流後の機能を評価した.室温機械灌流中のpH変化と再灌流中のグルコース,乳酸などとの比較検討を行った.【結果】室温機械灌流中のpHは特徴的な変化を示し,一例として灌流開始後,7.06まで徐々に上昇し,終了時に6.93と低下する.この肝臓の再灌流中の乳酸値は5.94から4.52[mmol/L]へと減少する.乳酸クリアランスとpH動態に相関が示され(r=-0.72),またAST,LDHとの相関も示された(AST:r=-0.78,LDH:=-0.77).【結論】室温機械灌流中のpH動態は移植前の機能評価手法としての適用可能性がある.